茶祖礼讃

お茶のルーツは誰なのか?

ROT-008 神農

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薬売りや医学関係者によって祭祀される神農。さらに詳しく見ていくと、近代まではごく一般的な風習だったようです。

 神農は、特定の職能民や商人にとって象徴的な神だったことが覗えます。

江戸末期の上野内の有力な薬種商は,店舗屋号として,大津屋系と境屋系の二系統のいずれかに属した.そのうちの大津屋系の流れをくむ高崎市赤坂町の滝川家9)は,明治末期まで毎年12月冬至の日に神農祭を行っていた.この日は米飯を炊かず,その夜は家re−一同が 集まって汁粉で神農祭を祝う習慣があった.神農祭は,かつては滝川家ぼかりでなく,広く薬種商では一般的に行われた風習であった.*1

 現代の感覚からすれば、科学的な医薬の世界で神仏を祀るという非科学的な行為に、矛盾が生じているととらえてしまうかもしれません。ですが、当時は現代のような西洋医学ではなく、中国由来の医学、漢方医学と認識されるようなものでした。なので、医薬の祖神とされる中国の神農を祭祀することは、何ら不思議なことではありません。彼らの生業の源流を、神農に求めたからです。特に、中国の文化や知識が一般にも普及した江戸時代なら、なおさらのことでした。