ROT-012 薬祖神
では逆に、「薬祖神」である神農とスクナヒコナの違いとは、何なのでしょう?
それはもちろん、記紀による日本神話への登場の有無があります。ですが、それ以外にも大きな差異があります。
「疫」という属性が、スクナヒコナにはあり、神農にはない点でしょう。神農は薬売りには信奉されても、疫病に苦しむ民衆には祀られていないことがわかります。「疫」は、クサ(瘡、草)やカサ(笠)とも呼ばれていたようです。好例が、奈良県天理市にあります。こちらの笠神社は、薬祖神スクナヒコナが祀られています。
また、こちらの津島神社には、境内摂社として瘡神(クサガミ、疱瘡神)が鎮座しています。
津島神社のクサガミはカヤノヒメであり、スクナヒコナとは神名が異なりますが、クサとカサは「疫」であることがわかります。つまり、「疫」属性のなかにスクナヒコナ(とカヤノヒメ)が位置づけられるということでしょう。
日本において「疫」属性をもって祀られるか否か。これが、同じ「薬祖神」でも神農とスクナヒコナの大きな違いと言えるでしょう。