茶祖礼讃

お茶のルーツは誰なのか?

ROT-013 薬祖神

神農

また、神農はスクナヒコナと同様の「薬祖神」ではあっても、スクナヒコナが属する「ノガミ(野神)の系譜」には含まれていません。

予めご了承いただきたいのは、 「ノガミの系譜」とは、私が勝手に整理したものです。先行研究や論文を探す手間を怠っておるため、適切な言葉を用いていないかもしれません。そのことを踏まえて、進めます。

「ノガミ」とは、野神とも表記される民間信仰の対象です。おそらく、名付けられる以前の神であり、集落の少し外れたところに「疫」として祀られていたようです。「ノガミの系譜」は、このノガミを始点に、数々の神仏への発展経緯を私的に整理したもの。おおよそ、次のような神仏が「ノガミの系譜」にあると考えております。

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これらは「疫」の神や境界の神でもあります。御神木と思しき大樹がノガミとして祀られ、連綿と祭祀されるものも多くあります。写真にあるノガミは、奈良市芝辻町に「ノガミサン」と呼ばれ祀られている大樹です。

ノガミの系譜は、人々が日々の安穏を願って祀った神仏の発展経緯ですが、ここに神農が入る隙はありません。なぜなら、神農は「疫」に対する恐怖や不安を和らげることができる神ではなかったからと考えられます。神農が扱うのは、医薬に関する具体的知識やノウハウでした。祀り、祈れば病が治り、安心を得られる対象ではなかったからなのでしょう。

だから「薬祖神」神農は、知識を求める人々の拠り所となり得たのでしょう。